連載ハードボイルド小説「G-メン'77」


 前回までのあらすじ…… 本部を訪れたGは、ボスからある女の(5/31の日記を参照。)

 Gは渋谷の街をよろめきながら歩いていた。

 結局、例の仕事は引き受けた。というか、既に引き受けていたことになっていた。

 「今朝お前に始末してもらった女も、実は私の愛人だった女だ。あと、以前にも何人か女がらみの仕事を頼んだが、あれも全部それ関係だった。…ほら、ハーレム…というヤツ、がだ、男…のロマンだったりするとか言うじゃないか。私はそんな説など信じちゃいない。いないが、ホラ…」

 最後の方、アイツが何を言ったのかはもはや覚えていなかった。それほど、ショックを受けていた。

 オレはプロの殺し屋だ。それがこの有様か。いつの間にか、ボスの女性問題処理の担当に成り下がっていた自分。オレは下らない仕事をする同業者を軽蔑してきた。その、このオレが、まさか軽蔑される側に回るとは。

 もはや今どこを歩いているのかも分からなかった。夜でもないのに、千鳥足だった。


 しばらく歩いただろうか。ようやく、ここが渋谷であることを理解した。若者の街、渋谷。街をうろつく彼ら彼女らは、オレが今どんなに凹んでいるかなど分からないのだろうな…などとバカなことを考えたりしていた。もう、仕事は受けてしまったのだ、やるしかないじゃないか。ボスは高い金を払うと言っている。オレは金を第一にしては動かない。動かないが、今回の件は腹が立つのでかなりの額をふっかけてやろう。そして、そのお金の一部を、オレの標的になってしまった彼女たちの遺族に支払おう。墓にも参ろう。あ、でも遺体が見つからないか。オレこういうのうまいからな…フフ…

 呆けた頭は直らないまま、Gはセンター街に消えていった。