ジャンゴ 繋がれざる者

タランティーノ監督最新作で、前作「イングロリアス・バスターズ」に続く「歴史上に存在する悪者は俺が成敗を下す」シリーズ。


過去のタランティーノ作品と比べても、一番間口の広い映画になってるんじゃないか。やー単純にすごい面白くて、3時間弱ある上映時間もあまり気にならなかった。途中トイレには行ったけどね。。

(以下、ネタバレ)

悪者に成敗を下すという点において、前作よりもずっとストレートに感情移入できてカタルシスも得やすいつくりになっているんじゃないかなあと。前作は、悪役であるはずのナチス側の人間が高潔に描かれていて、成敗する側のバスターズが下劣に描かれているという逆転が一部で起こっていたりしたけど、今作はそういったこともないストレートな復讐劇になっている。


そして何より復讐する側のジャンゴとドクター・シュルツのコンビがすごくいい。特にドクター・シュルツ演じるクリストフ・ヴァルツ。え、これが前作ですげー嫌な奴だったランダ大佐と同じ役者なのか。。と思うくらいいい奴で、彼が出てくるだけでどんどん画面に引き込まれていく。インテリなんだけど、いい奴感が前面に出ているので嫌味な感じはしないという。


ジャンゴ演じるジェイミー・フォックスももちろん良かった。復讐に燃える男で、けれども標的の前ではそれがばれないように演じなければならないというところを違和感なく演じていたんじゃないかと。
奥さんのいる悪の巣窟へ向かうときに、彼が見る奥さんの幻影に思わず泣きそうになってしまった。あそこの目の演技もいいんだよなあ。


あとは悪役のレオナルド・ディカプリオも良かった。金持ちのボンボンで、世間知らずな感じ、子どもがそのまま大きくなったような感じ、という点では合っていたのではないか。
役者の話をすると、他にもサミュエル・L・ジャクソンのワルっぷりとか(「お前は残れ」「えっ」って当たり前だろ!)枚挙にいとまがないのでここらへんで。


前作ではサスペンスの醸成に大きな役割を果たしていた「会話」が、今回はいかに主人公たちがこのピンチを口八丁で切り抜けるか、というところでやはり重要になっている。前作で繰り広げられる会話の緊張感は半端なかったが、今回は「さあ、どうやってこの危機を乗り切る?おおそうきたかー」というカタルシス方面が強くなっている。といいつつサスペンス的な緊張感を出すための会話シーンもあったりして(カルビン・キャンディが骨相学を語るときの、デタラメ科学の薄気味悪さ!)、なんにせよタランティーノの映画で会話が単なる無駄話ではなく(それはそれで必要なんだけど)、重要な機能を果たしているというのが近作の傾向かなと。


歴史的に重いテーマを扱っているのだけど、あくまでこれはジャンル映画だといわんばかりに明るくて爽快なラストのキャンディ邸爆破シーンも最高だったなあ。爆破に備え耳をふさぐ仕草がキュートなケリー・ワシントンと、仁王立ちで爆破を見届けるジェイミー・フォックスが素晴らしい。


そしてもちろん銃撃戦シーンの素晴らしさ、個人的には標的を外れた弾が近くにいる死体に当たるのを執拗に描写する感じとかがいいなあと思ったりしたのだけど、とりあえずこんな感じで。いやあ面白かった!!