フライト

スクリュードライバーを飲みたくなるね!

(以下、ネタバレ)
なんといってもまず、序盤の飛行機不時着シーンが凄かった。悪天候の中、雲間を抜けるデンゼル・ワシントンの常人離れした操縦技術をしっかりと見せたうえで、その後機体に異常が発生し急降下していくくだりを余すことなく見せる。そこでの、まさかの背面飛行からの不時着。予告にもあった、逆さまになった機体が飛んでいるという映像はインパクト抜群。それを目撃した登場人物と同じく「なんじゃありゃ!」と驚く名シーン。その後、機体の向きを元に戻し、不時着まで束の間訪れる不気味な静けさ。ここを体感するためだけにもう一度観に行ってもいいと思うくらい良いシークエンスだった。


で、その後は事故原因の追及が行われていき、デンゼル・ワシントン演じる主人公がアル中でいかにボロボロか、ということが描かれていく。基本はシリアスに演出されていく中で、ジョン・グッドマンが現れると途端にコメディと化すという奇妙なバランスがたまらなかった。


特に終盤、明日はいよいよ公聴会というところで、それまで一週間ちょい禁酒できていたデンゼル・ワシントンが果たして最後まで飲まずにいられるのか、というシーン。もうここは最高なので、実況形式でまとめておきたいと思う。


ホテルの部屋に備え付けてある冷蔵庫を開けるデンゼル、だが水とジュースしかない。ホッ。酒がなければアル中でもどうしようもない。明日着る服を準備。午前2時を回って横になるデンゼル。これで大丈夫か。でも寝付けない様子。あれどこかから音が。なんだドアが開いていただけか。窓も開いてるな。あれ、こっちの部屋にも冷蔵庫が。。まさか。。


冷蔵庫一面の酒。


まずい、これはまずい。。デンゼルも冷蔵庫の前から張り付いたように動かない。いや動けないのか。するとビンを手に取りフタを開ける!そして飲み口から匂いをかぐ!ああもうだめだ!もう飲んじゃうよ!


しかし!デンゼルはそっとフタを閉め、冷蔵庫の上にビンを置く!冷蔵庫を閉めゆっくりと立ち去るデンゼル!やった!デンゼルは自分に勝ったんだ!公聴会もこれで大丈夫だ!と、思いきや!


「シュピン!」(冷蔵庫の上に置いた酒ビンを、デンゼルがスローモーションで華麗に取る音)


やったー!やりおったー!!


翌朝、そこには案の定ドロドロに酔ったデンゼルの姿が。そのままではとても公聴会には出られないということで、ジョン・グッドマンの助けを借りてクスリを一発キメて出発!


いやー最高に笑った。しかも、そのまま終わらずに、公聴会で一転感動にもっていく力技がすごいなあと。まさに観客の感情をフライトよろしく操縦しきった作り手の凄さが際立つ映画だった。