哀しき獣

ナ・ホンジン監督の長編第二作目。前作の「チェイサー」も映画館で観たけど、前情報なしで観に行ってかなり面白かったのを覚えている。

(以下ネタバレあり)

とにかく全編にわたって繰り広げられる暴力シーンに尽きる。ナイフで刺し手斧で割り骨で殴る。銃も出てくるけどもほとんどがそんな暴力シーンで、すごかった。

話としては、男女の痴情のもつれから始まる争い(というか殺し合い)に、妻を信じ切ることができなかった男が巻き込まれていくというもの。ただ、話を理解するのに若干混乱が生じてしまったのは事実で、とくに終盤の、ミョン社長に殺しを依頼したのはだれか、が分かるくだりは状況を整理するのに大変だった。

あとこの映画も「ミッション:インポッシブル」と共通していて、敵のボスが前線で大活躍する。この映画の場合はミョン社長。前半の、ホテルでの手斧での惨殺シーンから始まって、後半アジトに襲撃されるシーンでの、さっきまで食ってた牛骨でもって敵をガツガツ叩き潰していくシーンでは所狭しと暴れまくる。もうナイフで刺されたくらいでは動じない。正直組織としては、トップが先陣切って大暴れするのはどうなんだと思いつつ、そこもすごかった。

そして主人公グナムのセリフがほとんどなく、動きや表情だけですべてを見せきる演出の力もすごかった。標的を殺そうと、自動で点灯・消灯する照明を使ってタイミングを計るシーンとかは見ていて楽しかったなあ。