連載ハードボイルド小説「G−メン'77」

 朝。いつもと変わりのない朝。七時に目が覚め、隣には女が寝ている。
「……」
 煙草を吸いながら、今日の任務について考えを巡らす。その後、テレビのスイッチを押す。
「あいつ… 主電源を切らなかったな」
 こういう女は嫌いだ。電力というものの重要さのかけらも分かっていない。ヤツにとって重要なのは、化粧のノリぐらいのものだ。
 とにかく気を取り直して、ズームイン朝を見る。朝の番組は習慣視聴だというが、俺の場合も同様だ。福留アナの頃から、そうして来た。ただ、めざましテレビの「本日の犬」とかいうのは見るようにしている。俺にとって、辛い毎日を癒す一時となっているのだ。
 そうこうしていると、女がベッドから起きて来た。
「意外ね… あなた、そんなもの見てるの?」
「そんなものとはなんだ。今の時間も分かるし、天気予報も見れる。それと、巨人の負けっぷりとかな」
「ふうん… まあいいわ、何か作ってあげる」
「…いや、その必要はない」
「え?どうして、お腹空いてないの?」
「そうじゃない。今日は、仕事があるんだ」
「それなら、ちゃんと食べなきゃ駄目じゃないの」
「…朝飯はちゃんと食うさ」
「……?だから、アタシが作って…」

 …朝はご飯に味噌汁、あとは納豆があれば十分だ。ヤツならきっと、トーストなんてものを出してきたに違いない。まあ、だからってワケじゃない。こちらも仕事だ。
 八時。電話のベルが鳴る。一秒の狂いもない。ゲッソリめ。杓子定規なヤツだ。
「どうだ、任務は済んだか?」
「ああ、まあな。後始末はそちらに頼んでいいんだな?」
「そうだ。しかし、さすがだな。女の扱いに関しては貴様、ライセンスをやってもいいくらいだ。こういう任務の時は頼りになる」
「こういう時だけか?…まあいい、とにかく俺は家に帰るぞ。いつも通り金は、メガバンクの方に振り込んでおけ」
「分かった。だが本部にも顔を出せよ。明日行って欲しい任務がある」
「…ああ。それじゃ」
 顔は、嫌いじゃなかったな… 今更そんなことを考えながら、テレビの主電源を切り部屋を出た。