翼ある闇 メルカトル鮎最後の事件

おすすめされていたのをようやく。ちなみにKindle版で購入。

(以下ネタバレ)
推理小説脱構築というか、まあそういった感じでとても楽しめた。

なにせ、探偵が途中退場したり、かと思ったら別の探偵が登場してきたり、かと思ったら途中退場した探偵が山籠もりによる修行でパワーアップして帰ってきたり(ドラゴンボールか何かかw)、かと思ったらもう一方の探偵が事件の犠牲者になってしまったりなどなど、探偵にまつわる部分だけで二転三転するという展開。これは楽しいですよ。

そして肝となる事件の推理も、密室の謎を「出てきていない第三の鍵を使った」とか、ロマノフの隠し財産がどうとか、挙句首のすげ替えが起こった後に死体が全力疾走したなどと、なんですかこれはという奇妙な推理をもっともらしく語っていて笑った。バカミスってあまり読んだことないけど、楽しいから他のも読んでみようか。

でも笑うのと同時に、推理小説って何だろうなということまで考えさせられるというか、そこまで含めて面白かった。この小説で披露される推理は全部で4つあって、新しい推理が生まれてはそれが覆されの繰り返しなのだけど、じゃあ最後に明かされる推理が事件の真相なのかというと、そこも疑問に思ってしまって。多分最後の推理を覆す新しい推理が出てきてもおかしくないと思った。(作者あとがきで、そこらへんの無限階梯についても触れられていた)そうするともう何が真相なのか分からなくなってくる。ひょっとすると作中では触れられていないが重要な証拠があったりするんじゃないか、あるいは探偵が手がかりと思っていたのは犯人がつかませた偽のものだったりとか。。

後期クイーン問題というのを初めて知ったのだけど、ここらへんに踏み込んだ本をもっと読んでみたいですね。