涼宮ハルヒの消失

池袋で観てきた。激混みでトイレ行くにも並ばなければならないという状況。売店も人でごった返していた。
(以下、ネタバレ)

まず、観始めて思ったのが、「やはり劇場版てことで背景とか気合い入ってんなー」。劇場版だと、いろいろな要素が派手になったり過剰になったりするものだけど、今作に関してはド派手なアクションが展開とかそういうことはなく。通常のテレビ版どおりに原作をトレースしつつ、ただし背景などは相当な描き込みがされていて素晴らしかった。

あとは、162分と「アバター」並の長時間なのにも関わらず、観ている間は全然時間が気にならなかった。原作は既読で、結末は知っているのにそれでもぐいぐい引き込まれた。割と淡々とした描写が続くのにこれはすごい、と思った。

ただ。観ていて気になった箇所が2つほど。これは、原作にもいえることなんだけど。


キョンの「選択」は1回にしてほしかった


劇中、キョンは「長門により作り替えられた世界」と「元の世界」のどちらを選ぶか、選択を迫られる。選択は

  1. Enterキーを押し、長門が作り替えた世界から脱出するところ
  2. 長門に銃を向けるところ

の2回行うんだけど、これは1回にまとめるべきなのかなーと。長い一人語り込みの、本当の意味での選択は(2)なんだけど、それを観るとどうも(1)の選択が「とりあえず」なものに思えて、あの世界のハルヒらが可哀想に感じてしまう。


キョン自身に長門を助けてほしかった


結局、キョンは朝倉の邪魔が入って長門に銃を撃つことができないまま終わってしまう。正直、ここらの展開(未来のキョンたちが助けに来た!)は一本の作品として考えると、必要なのかなーとは思うけどそれはまあいいや。

で、これは本作ではなく別の話で描かれるんだが、その未来から来たキョンも、自分で撃つことはせずに同じく未来から来た長門に任せてしまう。長門がああなった責任をいくらかでも感じているなら、そしてキョンの「選択」という意味でも、あそこは自身の手で終わらせて欲しかった。


あとは、小説との印象の違い。世界が変わってしまっている様子にキョンがかなりうろたえている様子が本作では描かれている。小説ではキョンの一人称で語られるので、そこら辺がなかなか伝わらなかったりするんだなーと。

そして長門の過剰なオドオドっぷりも印象に残った。あ、劇場版ならではの「過剰さ」はここに詰め込まれているのかもしれない。

で、一番グッときたシーンは、実は長門がらみのところではなく。キョンがようやくハルヒに出会っての喫茶店シーン。今まで仏頂面だったハルヒが、キョンの話を聞いて満面の笑みをうかべるところ、あそこにグッときた。「これだぜ!」と。あのハルヒの笑顔こそ、キョンが今までいた世界を象徴するものであり、世界が変わってしまったことへの絶望の中に一筋の希望を見出すにはこれ以上ないものでもある。キョンハルヒの笑顔を見て泣きそうな顔で笑うのもうなずける名シーン!