おれは斜めに吹っ飛んだ。

パティシエの一撃が、おれの向こう脛に炸裂したらしい。おれはパティシエから見て、右斜め上に吹っ飛んだ。

「よく堪えたな…常人ならアキレス腱を切らしていたところだぞ」

パティシエが、パティシエなりの賛辞をおれに向けている間に、おれは次の手を考えていた。

この角度から竜槍を投げれば、高い確率でパティシエの土手っ腹に突き刺さるだろう。しかしそれは同時に、竜槍を失うということでもある。

ならば、とおれは空中を勢いよく右足で蹴った。気流が変わり、ベムおじさんが現れる。

「パティシエを、何とか倒したい。知恵を貸してくれ」

のんびり屋のベムおじさんは、しばらくの間ののち、呟く。

「よかろう。但し、あれを避けられたら…の話だ」

振り向くと、パティシエのロングソードが目の前にあった。

「――――ッッ!!!」

避ける間もなく、パティシエ手製のロングソードがおれの左肩を貫く。そして同時に、ロングソードはベムおじさんをも貫いた。

「残念だったな…、次は200年後だ」

ベムおじさんがゆっくり空に溶けてゆく。