連載ハードボイルド小説「G-メン'77」

 前回までのあらすじ…… Gはショック略してG(略)(前回のは6/16にあります)

 「変ね…この年で一目惚れだなんて…。何なの?あなた…」
 「おいおい、何なのとはないだろう。それに言っておくが、一目惚れをしたのは君だけではないよ。フフ…」

 Gは今、一人では来ないような「とってもおしゃれなバー」にいる。店内は薄暗く、客はほんの数人しかいない。これもおしゃれのなせる業だ。

 Gの隣には女が座っている。女は若干顔赤めで、Gを見つめながら注文したシャトーマルソーを飲んでいる。ちなみにGは、ジンジャーエールだ。

 実はこの女は、Gのボスの愛人である。Gは、この女−A子としておこう、を消すよう命じられていて、そのための「とってもおしゃれなバー」なのだ。そして、A子がGに一目惚れしたのは本当であるが、GがA子に一目惚れしたのは嘘である。Gには女性を惚れさせる七十三のテクニックがあるが、A子にはないと思われるからだ。しかしボスの愛人だけあって、かなりの美貌は備えていた。備えてはいたがGの好みではなかった。と、いうか、これは仕事なので好みがどうということではなかった。

 「君に、さっき街角で出会った時、僕が落としてしまったハンカチを君はすぐさま拾ってくれた。その時に、僕は悟ったんだ。ああ、運命ってヤツは…ってね」

 これは二十六番目のテクだ。別にハンカチでなくても良い。ヨーヨーでも、おかきでも良い。

 「私も、そう思ったわ…ハンカチを拾って、あなたを見た瞬間、こう、電気が体中を走ったというか…」

 それは、本当だった。ぶっちゃけ、Gは任務のためにA子をスタンガンで気絶させ若干記憶を操作した。ちなみに、これはGの七十三のテクの中には、ない。

 とにかく、早く始末したいのだ!Gは、いつになくあせっていた。