初めて

アパートに一人暮らしするようになって初めて、ブレーカーを落としてしまった。ブレーカーを落とさない、ということは自分にとって誇りであった。ブレーカーを落とす、ということは電気使いすぎということであり、すなわち地球に優しくない、アンチ地球な生活ということである。もちろん、電気に頼りすぎな現代人という烙印も押されるだろう。そんなことは自分には無関係だと思っていた。俺はブレーカーを落とすようなヘマはしない、そう思っていた昨日まで。

しかし、世界は変わってしまった。賽は投げられたならぬ、ブレーカーは落とされたのである。自分もアンチ地球コミュニティ(会員数約2000万人)の仲間入りである。はじめましてトピックに書き込まなければならないのである。これほどの屈辱がかつてあっただろうか。いや、ない。落ちたブレーカーを上げる時のあの敗北感を、僕はおそらく一生忘れることはないだろう。

許されるのならば、昨日に戻りたい。昨日の景色はあんなに輝いていたのに、今は全てがくすんでしまっている。もう僕は昨日までの僕ではなくなってしまった。僕はこの先、どうやって生きていけばいいのだろう。